トマス・ピンチョン

〈二重思考〉のアイデアオーウェルに彼自身の抱えるジレンマを突きつけたように思われる。〈メタ二重思考〉とでも呼ぶべきもので、彼は〈二重思考〉がもたらす計り知れない潜在的害悪に抵抗する一方で、矛盾を超越するための可能性を秘めた方策としてそれに魅了されもしたのだ。このジレンマはまるで、どこか常軌を逸した禅問答――その基本となる公案は党の三つのスローガン、〈戦争は平和なり〉〈自由は隷従なり〉〈無知は力なり〉である――が悪しき目的のために利用されているかのようである。

『一九八四年[新訳版]』解説

 

参考:二重思考 - Wikipedia

 

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http://hideasasu.hatenablog.com/entry/20091023/1256250599