トマ・ピケティ

これらの新しい歴史の情報源からどんな結論を得られるだろうか?まず第一は、富と所得の不均衡についてのどんな経済的決定論にも警戒しておくべきだというものだ。富の分配の歴史は常に非常に政治的なものであって、純粋に経済的なメカニズムだけに還元することはできない。とくに、1910年と1950年の間に大抵の先進国において起こった不均衡の低下はまずなによりも戦争と、戦争のショックに対応しようとして採用された政策の結果だったのだ。同様に、1980年以降の不均衡の復活が大部分、過去数十年の政治的変化、特に課税と金融に関しての変化によるものだ。不平等の歴史は経済的、社会的、そして政治的アクターたちの何が正しく何が間違っているかについての観点、およびそういったアクターたちの勢力関係とその結果の集団的選択とによって形作られてきた。すべての関係者たちによる共同の産物なのだ。

第二の結論は、そしてこれがこの本の中心となるものなのだが、富の分配のダイナミクスは収束と発散に交互にむかう強力なメカニズムをあらわにしているという事だ。さらに、不安定化や不平等へと向かう力が永続的に支配的になることを妨げるような自然で自生的なプロセスなどというものはない。*1

 『21世紀の資本』

参照:http://median-voter.hatenablog.com/entry/2014/05/10/115302

*1:2016.4.6追記:参照元が削除されてしまったが、『21世紀の資本』の邦訳が出版される前に、有志の方が訳されたものから引用。