2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

小林雅一

これまで人間とコンピュータ(機械)を分ける最大の要素は、「創造性」あるいは「独創性」にあると考えられてきました。しかし作曲活動のような最も人間的で創造的な作業までもが、コープ氏の言う「音楽データの量とそれを再構成する能力」などという無機質…

シオラン

自由をめぐる悲劇的なパラドックスは、自由の行為を可能ならしめるのはただ凡人だけなのに、凡人には自由の持続を保証することができないという点にある。私たちは凡人の卑小さに一切を負うていながら、またその卑小さによって一切を失うに至るのだ。 『歴史…

市川伸一

くり返すことになるが、私は人間の日常的な推論には、認知的な制約や感情的な要因がはいってきて、合理的とはいえない面がたくさんあると思う。迷信、誤解、議論のすれ違い、個人的ないさかいや、果ては社会的な偏見や、国際紛争にいたるまで、さまざまな問…

岡倉覚三

まあ、茶でも一口すすろうではないか。明るい午後の日は竹林にはえ、泉水はうれしげな音をたて、松籟はわが茶釜に聞こえている。はかないことを夢に見て、美しい取りとめのないことをあれやこれやと考えようではないか。 『茶の本』 参照:https://twitter.c…

ホッブス

自然は人間を心身の諸能力において平等につくった。…この平等性が信じがたいものであるとするのは、おそらくは人が自分の知恵について抱く自惚れである。大部分の人間は、自分を自分以外のほんの少数の、名声があるとか自分と意見が一致するとかによって是認…

望月優大

ミシェル・フーコーは1982年に「無限の需要に直面する有限の制度 Un systeme fini face a une demande infini」という小文を書いています。これは社会保障の制度について論じたものですが、法が保証する権利が法の具体的運用の場面で与えられない、その具体…

ドストエフスキー

いったい人間の利益とやらは、完全に、正確に軽量されているのだろうか?(…)だいたいが諸君は、ぼくの知るかぎり、人間の利益の貸借表を作るのに、統計表や経済学の公式から平均値をとってきたのではなかったか。諸君のいう利益とやらは、要するに、幸福と…

東浩紀

この四半世紀ぐらいの人類は、冷戦崩壊と情報技術革命によって少しいい気になりすぎて、自分たちがしょせんは人間で、嫌なことはやりたくないし辱められればキレるという重要な制約条件を忘れてしまっているのではないだろうか。 心なんてリアルではない、金…

大栗博司・池谷裕二

池谷: すると最初の疑問に戻ってしまうのですが、基本法則は本当にあるのでしょうか。「基本法則がある」とヒトの脳が認識しているだけではないでしょうか。そして理論とは、自然界の中でたまたま脳が理解しやすい部分に焦点を絞って、都合よく構築された虚…

井上智洋

人工知能技術の発達が雇用を破壊し、人々を貧困に陥れるかどうかは政策次第である。上述した固定BIと変動BIからなる「2階建てBI」を実施することによって、多くの人々が豊かさを享受できるようになるはずだ。人工知能が害悪をもたらさずに発達し普及するため…

スティーヴン・ホーキング

「私がもっとも正したい人間の欠点は攻撃性です」「攻撃性は、洞窟で暮らしていた時代には、より多くの食べ物、土地、生殖のパートナーを獲得して生き延びるために好都合だったのかもしれませんが、いまでは私たちすべてを破滅させるおそれがあるのです」「…

橋本努

一般に、フリーダムとしての自由は文化や経済の領域で語られ、リバティとしての自由は政治や法の領域で語られることが多い。しかし両者は密接に結びついていると同時に、その意味は多義的である。 I・バーリンの有名な分類によれば、自由には「積極的自由」…

小林秀雄

(…)私達には、日に新たな機械の生活上の利用で手一杯で、その原理や構造に通ずる暇なぞ誰にもありはしない。科学の成果を、ただ実生活の上で利用するに足るだけの生半可な科学的知識を、私達は持っているに過ぎない。これは致し方のない事だとしても、そん…

ボブ・ブラック

人は皆、労働をやめるべきである。労働こそが、この世のほとんど全ての不幸の源泉なのである。この世の悪と呼べるものはほとんど全てが、労働、あるいは労働を前提として作られた世界に住むことから発生するのだ。苦しみを終わらせたければ、我々は労働をや…

今村仁司

アリストテレスによれば、理想的な国家では手仕事に携わる連中(職人)は国家のメンバーにしてはならない。プラトンも同様に、国家のメンバーたる自由人は決して手仕事に従事してはならないと厳しく言っている。商業にいたっては職人の労働よりももっと劣等…

パオロ・マッツァリーノ

働かざる者、食うべからず。よく耳にする言葉です。なんだか、どえらい昔からある金言・格言のひとつと思われがちですが、じつは日本人がこんなことをいい始めたのは、明治以降のことなのです。少なくとも、江戸時代以前にこんなことを口にした日本人はいま…

渡辺政隆

自然淘汰が作用する先に目的はない。ただ、生存繁殖率の違いがあるのみである。すなわち、たまたま利点をそなえたものが生き残り、その性質を子孫に伝えていく。その結果を後知恵で振り返れば、あたかも「神の見えざる手」が導いたかのような調和がもたらさ…

今村仁司

労働が原初の状態から「文明の状態」に人類を引き上げるのに大きな役割をした(苛酷な労働が人間を鍛え上げたというヘーゲルの命題をみよ)のは事実であろう。しかし、そのような歴史的事実と、労働が人間の本来的在り方であると言うのは別個の事柄である。…

小林秀雄

凡ては永久に過ぎ去る。誰もこれを疑う事は出来ないが、疑う振りをする事は出来る。いや何一つ過ぎ去るものはない積りでいる事が、取りも直さず僕等が生きている事だとも言える。積りでいるので本当はそうではない。歴史は、この積りから生れた。過ぎ去るも…

玄侑宗久

「個」の錯覚が元になった自己中心的な世界の眺めは、このもう一つの「知」である「般若」の実現で一変するのである。絶えざる変化と無限の可能性が「縁起」として実感され、あらゆる物質も現象も、「空」という「全体性」に溶け込んだ「個」ならざるものと…

老子

虚を致すこと極まり、静を守ること篤し。万物は並び作こるも、吾れは以て復るを観る。夫れ物の芸芸たる、各々其の根に復帰す。根に帰るを静と曰い、是れを命に復ると謂う。命に復るを常と曰い、常を知るを明と曰い、常を知らざれば、妄作して凶なり。(第十…

港千尋

原牛の生命も、クローン牛の生命も、そして再クローン牛の生命も、いまや同じように「生命」と呼ばれる。生命をクローンしてゆくという、この単純な事実以上に、わたしたちを驚かせるものはない。この「生命」は、「生命」科学や「生」物学と同じ意味として…

木村敏

神話学者のカール・ケレーニーによれば、古代のギリシャ語は生命を意味する二つの単語「ビオス」と「ゾーエー」をもっていた(岡田素之訳『ディオニューソス』白水社、15頁以下)。「ビオス」biosというのはある特定の個体の有限の生命、もしくは生活のこと…

村松剛

日本人は美しい緑の国土に、その美しさをかくべつ不思議と思わずに生きています。自然というものは美しいものだと、だれでもがあたりまえのこととして、そう考えている。春には花が咲き、秋には野山は紅葉します。もし神があるとすれば、この美しい自然のな…

加地伸行

風土的に言って、南アジアのインドは酷烈な環境である。「生きていること自身が苦しみである」ということばには実感がある。仏教のみならず、インド諸宗教が、共通してこの世の苦しみから救済を、解脱を求めたのは当然であろう。風土の過酷さと言えば、イン…

エーリッヒ・フロム

アリストテレス以来、西洋世界はアリストテレス哲学の論理に従ってきた。その論理とは、AはAであるという同一律と、矛盾律(Aは非Aではない)と、排中律(Aは、Aであると同時に非Aであることはできないし、Aでないと同時に非Aでもないということもありえない…

マイケル・S. ガザニガ

ラマチャンドランも、ジョン・ロックの自由意志論に似た考え方でこう語っている。「私たちの意識が持っているのは、自由意志ではなく『自由否定』かもしれない」 デネットは進化の切り口からこう書いている。「保存した情報を取り出すことで適応上有利になる…

松田卓也

世の中の多くの人、特にインテリと呼ばれる人たちは持続可能社会を目指すべきだと言うのですが、それは不可能です。仏教で諸行無常と言いますが、無常というのは常ならぬこと。社会にせよ何にせよ、上がるか下がるか、栄えるか滅びるか。ずっとコンスタント…

山本貴光

「実は、物理環境はとても大事だと思っているんです。電子データは、検索したり呼び出すまでは見えないところに保存されている便利さがあります。本と比べて場所をとりませんよね。これに対して書棚に本を並べるような物理環境は、かさばる代わりに常にそこ…

夏目漱石

曰く自己の繙読しつゝある一書物より一個の暗示を得べく務ることこれ也。唯漫然として書の内容を記憶し、理解するに止まらば、読書の上に何の効果あらんや。 「余が一家の読書法」(『漱石全集 第25巻』) 参照:http://lite-ra.com/2015/03/post-938_3.html