今村仁司

アリストテレスによれば、理想的な国家では手仕事に携わる連中(職人)は国家のメンバーにしてはならない。プラトンも同様に、国家のメンバーたる自由人は決して手仕事に従事してはならないと厳しく言っている。商業にいたっては職人の労働よりももっと劣等であると非難された。貨幣を扱う商業は欲望を際限なく増殖させるからである。商業は、汚くて恥ずかしい手仕事の最たるものであった。

『近代の労働観』(p.4)