渡辺政隆

自然淘汰が作用する先に目的はない。ただ、生存繁殖率の違いがあるのみである。すなわち、たまたま利点をそなえたものが生き残り、その性質を子孫に伝えていく。その結果を後知恵で振り返れば、あたかも「神の見えざる手」が導いたかのような調和がもたらされる。
そこではたらくのは、必ずしも競争原理だけではない。ティクターリクの生き方のように、競争を避ける生き方もありうる。新しい生き方が一つ増えれば、新しいニッチも生まれる。

『ダーウィンの夢』(p.152)