小林雅一

これまで人間とコンピュータ(機械)を分ける最大の要素は、「創造性」あるいは「独創性」にあると考えられてきました。しかし作曲活動のような最も人間的で創造的な作業までもが、コープ氏の言う「音楽データの量とそれを再構成する能力」などという無機質なコンピュータ科学の対象となりつつある今、その本質があらためて問い直されています。一体、創造性とは何なのでしょうか。
(…)スティーブ・ジョブズ氏は、かつて米ワイアード誌によるインタビューの中で「創造性というのは物事を結びつけること(コネクション)にすぎない」と述べ、その真意を次にように説明しています。
「クリエイティブ担当者にこれ(著者注:創造的作品)はどうやったのかと訊けば、彼らは少々罪悪感にとらわれる。実際には何もしていないからだ。彼らはただ見ただけだ。見ているうちに彼らにははっきりする。過去の経験をつなぎ合わせ、新しいものを統合することができるからだ。それが可能なのは、彼らがほかの人間より多くの経験をしているから、あるいはほかの人間より自分の経験についてよく考えているからだ」(『スティーブ・ジョブズの流儀』、リーアンダー・ケイニー、ランダムハウス講談社より)
これとほぼ同じことを、著名なSF作家のアイザック・アシモフも述べています。自身が生化学者でもあったアシモフは、1959年に記したエッセイの中で創造性について、次のような考えを述べています。
「(創造性とは)一見異なる領域に属すると見られる複数の事柄を、ひとつに結びつける能力を持った人から生まれる」

『AIの衝撃』(p.234-235)

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