東浩紀

この四半世紀ぐらいの人類は、冷戦崩壊と情報技術革命によって少しいい気になりすぎて、自分たちがしょせんは人間で、嫌なことはやりたくないし辱められればキレるという重要な制約条件を忘れてしまっているのではないだろうか。

心なんてリアルではない、金とモノだけがリアルで残りは幻想にすぎない、と考えるのがいわゆるリアリストであり唯物論者だけど、現実にはまったくそんなことはなくて、心の制御を間違えるととんでもないことになるというのが19世紀の発見(精神分析)であり20世紀前半の教訓(全体主義)だった。

徹底した経済合理主義というのは、資本主義的でいてじつは空想社会主義的でもあって、実際この20年ぐらい人々は情報技術によるユートピアの到来を説き続けてきたわけだけど、そう考えるとチェルヌイシェフスキーを批判するため「地下室の手記」を書いたドストエフスキーの現在性が浮かび上がる。

冷戦崩壊からこちらは徹底した経済合理主義の時代で、人間とはおしなべて経済的人間であり、金とモノさえあれば満足すると想定され学問も政治も動いてきたわけだけど、そろそろ心という厄介なものがあることに気づくべきなのではないかと、相次ぐテロを見て考える。

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