脳・心理

shorebird

グリーンはもう一度粘り強くマニュアルモードの功利主義をメタ道徳構築に用いることを進め,現代を生きるための6つのルールを提示して本書を終えている.私の理解を含めて書き直すと以下のようなルールになる. 1.道徳的論争に直面したときに自分の道徳的直…

阿部修士

本書において彼*1は、社会生活を営む我々人間を取り巻く二種類の問題と、人間に備わった二種類の脳のモードについて説明しながら、自身の道徳哲学の議論を進めていく。 二種類の問題とは「コモンズの悲劇」と「常識的道徳の悲劇」である。コモンズの悲劇とは…

飯島和樹

17世紀にルネ・デカルトが『方法序説』のなかで述べた、「人間を自動機械から区別するのは、人の創造的な言語使用である」という考え方は、いまだに(残念ながら)有効だ。 人間の言語能力は、有限な要素から、無限の新たな文を生み出すことを可能にするもの…

ダニエル・カーネマン

ある言明の理解は、必ず信じようとするところから始まる。もしその言明が真実なら何を意味するのかを、まず知ろうとする。そこで初めて、あなたは信じない*1かどうかを決められるようになる。信じようとする最初の試みはシステム1の自動作動によるものであ…

テンプル・グランディン

人間が大きな前頭葉をもつためにはらった代償は鈍感になったことだ。ある意味では自閉症の人や動物は鈍感ではない。めくるめくような大量のこまかい情報を感じているのだ。 脳の新皮質を取りのぞいても、動物は遊ぶ。前頭葉は新皮質の中で決断と責任をつかさ…

利根川進

――脳研究は急速に進歩しています。2045年には人工知能が人間の能力を上回り、人類の脅威になるとの意見もあります。「45年問題」をどう考えますか。 「人工知能は大きな問題になってくるだろう。人間というのはできることはなんでもやる。脳が欲している。人…

高橋恒一

たとえば人間の持つ「感情」について考えてみましょう。私たちは、「気分がいい」という理由で楽しい行動をとります。逆に気分がよくなければ、気分をやわらげるような行動をとります。一体なぜでしょう? この時に脳でどんなことが起こっているのかを考えて…

フロイト

人間通の人々や哲学者たちは以前から、人間の知性を独立した力として評価するのは間違いであり、知性が感情的な生に左右されること見逃してはならないことを、教えてくれているのである。人間の知性の働きを信頼できるのは、強い感情の支配の動きにさらされ…

ジュリオ・トノーニ

意識を生み出す基盤は、おびただしい数の異なる情報を区別できる、統合された存在である。つまり、ある身体システムが情報を統合できるなら、そのシステムには意識がある。(126頁、第5章) 『意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論』 参照:htt…

shorebird

本書は進化心理学者ロバート・クツバンによるヒトの心のモジュール性,そしてそれによる道徳と偽善の説明の本である.ヒトの心がモジュール的であるというのは,進化心理学勃興時から強調されていたことで,コスミデスとトゥービイがこれをスイスアーミーナ…

ジョナサン・ハイト

人類は無条件にあらゆる人々を愛するべく設計されている、と信じられるのならとてもすばらしい。しかし進化論的な観点から言えば、そんなことはまずあり得ない。 初期の人類は、部族の道徳マトリックスのもとで生活する能力の有無に基づいて友人やパートナー…

下條信輔

「自分のことは自分が一番知っている。とりわけ自分の心の中のことは」。これは万人に共通する暗黙の了解事項であり、古典的信念とさえいえる考え方です。しかしこれと真っ向から対立する考え方を大胆にも提唱する社会心理学者たちがいることを、前回の講義…

池谷裕二

「ヒトは自分自身に無自覚であるという事実に無自覚である」とは、ヴァージニア大学のウィルソン博士*1の言葉です。私たちは自分の心がどう作動しているかを直接的に知ることはできません。ヒトは自分自身に対して他人なのです。こうした研究成果が明らかに…

スタンレー・ミルグラム

服従の本質というのは、人が自分を別の人間の願望実行の道具として考えるようになり、したがって自分の行動に責任をとらなくていいと考えるようになる点にある。 『服従の心理』 参照:http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html関連:http:/…

shorebird

本書はまずダーウィンのヒトのモラルの進化についての取り組みを紹介し,そこから血縁者以外への利他性の謎を提示し,血縁淘汰や直接互恵性では説明しきれないと断ずる.そして間接互恵性やグループ淘汰が効いている可能性を指摘しつつ,どの理論にとっても…

ダニエル・カーネマン

私たちは、自分自身の判断や意思決定をどうしたら向上させられるだろうか。ついでに、上司や部下の判断と意思決定を向上させるにはどうしたらいいだろう。一言で言えば、よほど努力をしない限り、ほとんど成果は望めない。経験から言うと、システム1*1にもの…

池谷裕二

私たちは意識上では極めて自由に行動しているつもりであっても、現実には、本人でさえ自覚できないような行動のクセがあって、知らず知らずに、活動パターンが常同化しています。バラバシ博士らは「ヒトには変化や自発性への強い顔貌があるが、現実の生活は…

岡ノ谷一夫

自己意識ができる前に、「心の理論」と「ミラーニューロン」という2つのシステムがあった。最初は他人に心があると仮定して他人の行動をうまく予想することが適応的になりました。次に、他人の心を予想するシステムをミラーニューロンで照り返し、流用する…

小坂井敏晶

外界の状況に簡単に影響される事実とは裏腹に、行動の原因を性格・人格など当人の内的要素に求める様子がわかります。行動を理解する上で外からの影響を軽視すると同時に内的要因を誇張するまちがいは、ミルグラム実験の行動予測だけでなく、一般的に見られ…

トーマス・ズデンドルフ

六つすべての領域で、人間をほかの動物から区別する二つのおもな特徴が繰り返し出てきた。それは、さまざまな状況を想像したり考察したりすることを可能にする、入れ子構造を持つシナリオの構築能力と、心を他者の心と結びつけたいという衝動だ。主としてこ…

下條信輔

現代社会と現代人のさまざまな不合理や理不尽は、情動と潜在認知というキーワードで読み解くことができそうです。現代人は、過剰と誘導と操作と制御とに晒されています。マスメディアと大衆誘導技術の発達が、潜在認知というパンドラの函を開けてしまいまし…

市川伸一

くり返すことになるが、私は人間の日常的な推論には、認知的な制約や感情的な要因がはいってきて、合理的とはいえない面がたくさんあると思う。迷信、誤解、議論のすれ違い、個人的ないさかいや、果ては社会的な偏見や、国際紛争にいたるまで、さまざまな問…

大栗博司・池谷裕二

池谷: すると最初の疑問に戻ってしまうのですが、基本法則は本当にあるのでしょうか。「基本法則がある」とヒトの脳が認識しているだけではないでしょうか。そして理論とは、自然界の中でたまたま脳が理解しやすい部分に焦点を絞って、都合よく構築された虚…

マイケル・S. ガザニガ

ラマチャンドランも、ジョン・ロックの自由意志論に似た考え方でこう語っている。「私たちの意識が持っているのは、自由意志ではなく『自由否定』かもしれない」 デネットは進化の切り口からこう書いている。「保存した情報を取り出すことで適応上有利になる…

池谷裕二

快感と不快感は正反対の感覚のように思いますが、実はメビウスの輪の表裏のように紙一重の違いでしかないようです。たとえば、エルサレム・ヘブライ大学のアヴィーザー博士らは2012年の『サイエンス』誌で、顔写真から、(1)性的エクスタシーに浸って…

ダニエル・カーネマン

私たちにはパターンを探そうとする傾向があり、世界には一貫性があると信じている。そこでは、規則性(…)は偶然に起きるものではなく、機械的な因果律か、でなければ誰かの意志によって起きるものだと考える。ランダムなプロセスから規則性が生まれるとはゆめ…

池谷裕二

まず世界がそこにあって、それを見るために目を発展させた、というふうに世の中の多くの人は思っているけど。ほんとはまったく逆で、生物に目という臓器ができて、そして、進化の過程で人間のこの目ができあがって、そして宇宙空間にびゅんびゅんと飛んでい…

池谷裕二

繰り返しになるけど、「正しい」「間違い」という基準はなく、むしろ、その環境に長く暮らしてきて、その世界のルールにどれほど深く順応しているかどうかが、脳にとっては重要だってこと。もう一歩踏み込んで言えば、「正しい」というのは、「それが自分に…

石川幹人

意識の役割は、意識が誕生した時点からすでに、「現状の改善」に重きがおかれていた可能性が大です。なぜなら、現状でうまくいっているのならば、下等生物のように意識をもたず、つねに無意識下で行動していたのでもよいことになるからです。私たち人間が意…

池谷裕二

(…)意識を一種の「警告システム」であると考える学者がいます。想定外の事件が生じたときに、意識が生まれ、私たちに知らせるという考え方です。 意識が“意外性”の反映だとしたら、面白い側面が見えてきます。意識が表われたとき、脳は周囲の状況を解釈し…