石川幹人

意識の役割は、意識が誕生した時点からすでに、「現状の改善」に重きがおかれていた可能性が大です。なぜなら、現状でうまくいっているのならば、下等生物のように意識をもたず、つねに無意識下で行動していたのでもよいことになるからです。私たち人間が意識的に行動する以上、現状そのままではうまくなく、意識が誕生することでなんらかの改善がなされる必要があったということでしょう。無意識では難しい現状打破の柔軟な思考が、社会的な場面で要求され、意識が不可欠とされた進化的経緯があったとみられます。
意識的な行動の目的が現状の改善にあり、改善の結果によって幸福感が意識されるとすれば、現状ですでにうまくいっている場合は幸福感が得られないことになります。つまり、意識的にがんばって、つねに向上していないと幸福を感じつづけられないのです。つねに向上など、ふつうはありません。ですから、実現できそうもないくらい大きな主義主張にむかい、じょじょに接近する(という妄想をいだく)のは、幸福を感じつづける戦略として有効なのです。ほとんど偏執狂(パラノイア)ですね。
健全に幸福を感じるには、どうしたらよいでしょうか。ときどきわざと不幸になって、それから改善していく、という過程をくり返すことです。

 『だまされ上手が生き残る 入門! 進化心理学

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