フロイト

人間通の人々や哲学者たちは以前から、人間の知性を独立した力として評価するのは間違いであり、知性が感情的な生に左右されること見逃してはならないことを、教えてくれているのである。
人間の知性の働きを信頼できるのは、強い感情の支配の動きにさらされていない場合だけなのである。強い感情の支配のもとにあるときは、人間の知性は意志の道具としてふるまうのであり、意志の求める成果だけをもたらす。論理的な議論は、情動的な利害関係の前では無力であり、利害関係が支配する世界では、根拠に基づいた論争は何ものも生まないのである。ファルスタックの言葉を借りれば、根拠などというものは、ブラックベリーの実ほどに無数にあるものなのである。

『人はなぜ戦争するのか エロスとタナトス』(p.68)

 

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