下條信輔

「自分のことは自分が一番知っている。とりわけ自分の心の中のことは」。これは万人に共通する暗黙の了解事項であり、古典的信念とさえいえる考え方です。しかしこれと真っ向から対立する考え方を大胆にも提唱する社会心理学者たちがいることを、前回の講義では紹介しました。それは認知的不協和や自己知覚に関する研究に基づくものでした。
その新しい考え方というのをもう一度復習しておくと、だいたい次のようにまとめられるでしょう。「自己に対する内的な知識はきわめて不完全である。それは無意識的な推論によって補われているものであり、極言すれば自分とはもうひとりの他人であるにすぎない」。

『サブリミナル・マインド』(p.37)

 

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