ラッセル

すべての不幸は、ある種の分裂あるいは統合の欠如に起因するのである。意識的な精神と無意識的な精神とをうまく調整できないとき、自我の中に分裂が生じる。自我と社会とが客観的な関心や愛情によって結合されていないとき、両者間の統合の欠如が生じる。幸福な人とは、こうした統一のどちらにも失敗していない人のことである。自分の人格が内部で分裂してもいないし、世間と対立してもいない人のことである。そのような人は、自分は宇宙の市民だと感じ、宇宙が差し出すスペクタクルや、宇宙が与える喜びを存分にエンジョイする。また、自分のあとにくる子孫と自分は本当に別個な存在だとは感じないので、死を思って悩むこともない。このように、生命の流れと深く本能的に結合しているところに、最も大きな歓喜が見いだされるのである。

『幸福論』(p.273)


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