ユートピア/ディストピア

マレー・シャナハン

フェルミは質問する。「みんなはどこにいる?」と。 フェルミのパラドックスにはたくさんの解答が可能であり、ここで取り上げられないぐらいほど考えられる。そのうちの一つは、われわれがいまだに地球外知的生命体に出会っていない理由は、すべての高度文明…

ミシェル・ウエルベック

『O嬢の物語』にあるのは、服従です。人間の絶対的な幸福が服従にあるということは、それ以前にこれだけの力を持って表明されたことがなかった。それはすべてを反転させる思想なのです。わたしはこの考えをわたしと同じ宗教を信じる人たちに言ったことはあり…

山形浩生

ぼくは反知性主義というのは世界において普遍的なものだと思っている。そうした動きは、どんな宗教にも、いやどんな文化文明にも存在する。たとえば浄土宗や浄土真宗は、真言密教を筆頭に「中国でお勉強してきました」エリート仏教に対する一つの反動だ。こ…

アーサー・C・クラーク

電子新聞の細かい見出しを見ていて、もうひとつ思いだされることがある。コミュニケーション手段が発達するにつれ、その中身がますますくだらなく、けばけばしく、陰惨に見えてくることだ。事故、犯罪、天災、人災、紛争のきざし、暗い社説──宇宙空間にばら…

スティーブ・ウォズニアック

ウォズニアック氏はFreescale Technology Forum 2015で講演し、「人工知能が我々よりも賢くなれば、彼らにとって我々が必要なものであることに気付くだろう」と述べたという。また、人工知能が人類を支配するだけの能力を獲得したときには、自然を保護するこ…

高橋恒一

時期ははっきりとは言えませんが、10年後以降、人工知能はもう1つの大きな壁に挑むことになるかもしれません。それは「言語獲得」の壁です。言語処理のための優れた人工知能技術の開発はこれまでも成されてきましたが、本当の意味で言語の意味を理解し、運用…

芥川龍之介

完全なるユウトピアの生れない所以は大体下の通りである。――人間性そのものを変えないとすれば、完全なるユウトピアの生まれる筈はない。人間性そのものを変えるとすれば、完全なるユウトピアと思ったものも忽ち不完全に感ぜられてしまう。 「ユウトピア」/…

アーサー・C・クラーク

すべての人に絶えず満足を与え続けるユートピアなど存在しない。物質的な環境が改善されれば、人はさらに上を望む。かつては夢のまた夢でしかなかった力や財産にすら物足りなさを感じるようになる。そして外界に求められるものをすべて手に入れたあとでも、…

オルダス・ハクスリー

今では社会は安定している。人びとは幸福だ。欲しいものは手に入るし、手に入れられないものはみんな欲しがらない。人びとは暮らしが楽で安全だ。病気にもならない。死ぬことを恐れもしない。激情や老齢などというものはさいわい知らない。母親や父親に煩わ…

トマス・ピンチョン

〈二重思考〉のアイデアはオーウェルに彼自身の抱えるジレンマを突きつけたように思われる。〈メタ二重思考〉とでも呼ぶべきもので、彼は〈二重思考〉がもたらす計り知れない潜在的害悪に抵抗する一方で、矛盾を超越するための可能性を秘めた方策としてそれ…

長谷川英祐

動物の社会に共通しているのは、不完全な個体から完全な群体が進化したのではなく、完全な個体から不完全な群体が進化したという流れです。 複数の個体が集合して暮らすコロニーという群体。遺伝的に不均質な個体が協力するそのシステムが、個体の適応度を最…

ドストエフスキー

いったい人間の利益とやらは、完全に、正確に軽量されているのだろうか?(…)だいたいが諸君は、ぼくの知るかぎり、人間の利益の貸借表を作るのに、統計表や経済学の公式から平均値をとってきたのではなかったか。諸君のいう利益とやらは、要するに、幸福と…

井上智洋

人工知能技術の発達が雇用を破壊し、人々を貧困に陥れるかどうかは政策次第である。上述した固定BIと変動BIからなる「2階建てBI」を実施することによって、多くの人々が豊かさを享受できるようになるはずだ。人工知能が害悪をもたらさずに発達し普及するため…

ハルトマン

形而上学者 (…)要するに、人間は苦悩するために存在しているのであり、消滅するに越したことはないのですが、数億年もすれば、再び「宇宙的無意識」は新たな人間を生み出して、彼らが再び苦しまなければなりません。さらに、仮に地球を破壊したとしても、…

デイヴィット・ドイッチュ

宇宙物理学者 (…)オックスフォード大学の量子物理学者デイヴィット・ドイッチュは、知性がコントロールすることのできる宇宙の領域は徐々に拡張し、数億年後には、いわば「超知性」が誕生するだろうと述べています。最終段階において、この「超知性」は宇…

松田卓也

――人工知能が発達し、いままで人間がやってきたことを肩代わりする一方で、人間には何が残るのでしょうか? 最後に残るのは遊ぶこと、くらいでしょうか。理想の世界は、生産はすべて機械がやって、人間は遊ぶだけ。でも、お茶とかお花とかは、いかにルールが…

戸田山和久

現在、多くの人々が市民的自由を行使することと、自己責任を引き受けることを直結させている。「誰があんたにそれをしろと強制しました? あんたが自分で選んだんだから、その結果どうなろうとあんたの自己責任でお願いしますよ」という具合。しかし、これま…

伊藤計劃

老人たちがそれぞれのコードを入力し、ハーモニー・プログラムが歌い出した瞬間、人類社会から自殺は消滅した。ほぼすべての争いが消滅した。個はもはや単位ではなかった。社会システムこそが単位だった。システムが即ち人間であること、それに苦しみ続けて…

安藤馨

自動車のエンジンが酒気を帯びていれば起動しないメカニズム、脱税なき完全消費税を達成する貨幣の完全電子化など、行為主体の予期がなくとも望ましい行動を採らせることが可能な統治技術の発達は、予期と愛着=共感を必要とする威嚇サンクションを無用なら…

伊藤計劃

システムがそれなりに成熟していれば、意識的な決断は必要ない。これだけ相互扶助のシステムがあって、これだけ生活を指示してくれるソフトウェアがあって、いろいろなものを外注しているわたしたちに、どんな意志が必要だっていうの。問題はむしろ、意志を…

ドストエフスキー

≪お前は世の中に出て行こうと望んで、自由の約束とやらを土産に、手ぶらで行こうとしている。ところが人間たちはもともと単純で、生まれつき不作法なため、その約束の意味を理解することもできず、もっぱら恐れ、こわがっている始末だ。なぜなら、人間と人間…

ジョージ・オーウェル

自由とは二足す二が四であると言える自由である。 『一九八四年』

伊藤計劃

「わたしがわたしであることを捨てたほうがいい。『わたし』とか意識とか、環境がその場しのぎで人類に与えた機能は削除したほうがいい。そうすれば、ハーモニーを目指したこの社会に、本物のハーモニーが訪れる」 『ハーモニー』 関連:http://hideasasu.ha…

ドストエフスキー

「私の結論は、私がそもそもの出発点とした当初の理念とまっこうから矛盾するにいたったのです。無制限の自由から出発しながら、私の結論は無制限の専制主義に到達したのであります。しかしながら、つけ加えますと、社会形態の問題は私の解決以外にけっして…

トム・ヨーク

よりよい適応、よりよい幸福、より高い生産性もっと快適に酒はほどほどにジムで定期的に運動を(週に3回)同僚とは仲良く、時代に遅れず肩の力を抜いてよく食べ(冷凍食品と脂肪は控えて)忍耐強い優良ドライバーにより安全な車(バックシートには笑顔の赤ん…