ミシェル・ウエルベック

O嬢の物語』にあるのは、服従です。人間の絶対的な幸福が服従にあるということは、それ以前にこれだけの力を持って表明されたことがなかった。それはすべてを反転させる思想なのです。わたしはこの考えをわたしと同じ宗教を信じる人たちに言ったことはありませんでした。冒涜的だと捉えられるだろうと思ったからですが、とにかくわたしにとっては、『O嬢の物語』に描かれているように、女性が男性に完全に服従することと、イスラームが目的としているように、人間が神に服従することの間には関係があるのです。お分かりですか。イスラームは世界を受け入れた。そして、世界をその全体において、ニーチェが語るように『あるがままに』受け入れるのです。仏教の見解では世界は『苦』、すなわち不適当であり苦悩の世界です。キリスト教自身もこの点に関しては慎重です。悪魔は自分自身を『この世界の王子』だと表明しなかったでしょうか。イスラームにとっては、反対に神による創世は完全であり、それは完全な傑作なのです。コーランは神を称える神秘主義的で偉大な詩そのものなのです。創造主への称賛、その法への服従です。

カトリックの教会は、進歩主義者たちに媚び、おべっかを使い甘やかすことで、恥ずべきことに、頽廃的な社会の傾向に対抗不可能になり、同性愛者の結婚や、妊娠中絶や女性の就労の権利をきっぱりとそして厳格に否定できなくなったのだ。はっきりとさせておかなければならない。吐き気を催すような解体がここまで進んでしまった西欧の社会は、自分で自分を救う状態にはもうないのだ。古代ローマが五世紀に自らを救えなかったのと同じだ。移民人口が大量に増え、それらの移民がまだ自然のヒエラルキー、女性の服従や先祖崇拝の色濃い伝統的な文化の影響を受けていることは、ヨーロッパの道徳及び家族をリセットする歴史的なチャンスであり、この旧大陸に新しい黄金期をもたらす機運なのだ。これらの移民は時にはキリスト教徒であったが、その多くがイスラーム教徒であったことは認めなければならないだろう。

『服従』

 

参照:http://aidagawa.hatenablog.com/entry/2015/09/14/022458

 

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/10/25/201526
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2014/05/21/212450
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/04/16/214347
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/03/14/070923
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/10/29/235449
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/02/25/192000