自由

埴谷雄高

――ところで、生れついてこの方絶えず外部からつき動かされている俺達が自らだけから発した意志、正真正銘の自由意志でおこなえることがこの人生に二つあるが、お前はそれがなんだと思うかね。 ――他のひとつは解りませんけれど、ひとつは古くから決っています…

ドストエフスキー

人間は良心の自由などという重荷に堪えられる存在ではない。彼らはたえず自分の自由とひきかえにパンを与えてくれる相手を探し求め、その前にひれ伏すことを望んでいるのだ。だからこそ、われわれは彼らを自由の重荷から解放し、パンを与えてやった。今や人…

ゲーテ

自由でないのに、自分は自由だと思っているものほど奴隷になっているものはない。(「親和力」第二部五章) すべての人間が、自由を得るや、その欠点を発揮する。強い者は度を超え、弱い者は怠ける。(「格言と反省」) 自由というものは妙なものだ。だれで…

ドストエフスキー

「私の結論は、私がそもそもの出発点とした当初の理念とまっこうから矛盾するにいたったのです。無制限の自由から出発しながら、私の結論は無制限の専制主義に到達したのであります。しかしながら、つけ加えますと、社会形態の問題は私の解決以外にけっして…

ヘンリー

鎖と隷属の対価で購われるほど、命は尊く、平和は甘美なものだろうか。全能の神にかけて、断じてそうではない。私は、これ以外に私の進むべき道を知らない。私について言えば、私に自由を与えよ。然らずんば死を与えよ。 (演説)

小林秀雄

この主人公*1は、人間の意識というものを、殆どベルグソンの先駆者の様に考える。意識とは観念と行為との算術的差であって、差が零になった時に本能的行為が現れ、差が極大になった時に、人は、可能的行為の林のなかで道を失う。安全な社会生活の保証人は、…

埴谷雄高

何故書くかという問いに私は容易に答え得ぬ。私にとってその文学は一般から非常にずれた妄想の延長上にあるのだから。けれども、何故妄想するかとさらに問われるならば、私は比較的気が楽になり直ちに答えを返し得る。内的自由の追求――と。 (「何故書くか」…