人間

ニーチェ

理想への路を見失った者は、理想なき人間よりも、軽薄に破廉恥に生きる。 (『善悪の彼岸』)

小林秀雄

間違ってばかりいる大衆の小さな意識的な判断などは、彼には問題ではなかった。大衆の広大な無意識界を捕らえて、これを動かすのが問題であった。人間は侮蔑されたら怒るものだ、などと考えているのは浅薄な心理学に過ぎぬ。その点、個人の心理も群集の心理…

マルクス

人間は自分自身の歴史を作る。だが、思うままにではない。自分で選んだ環境のもとでではなく、すぐ目の前にある、与えられ持ち越されてきた環境のもとで作るのである。死せるすべての世代の伝統が夢魔のように生けるものの頭脳を押さえつけている。 (『ルイ…

小林秀雄

人の心は問題の解決をいつも追っているかも知れぬが、矛盾の解決によって問題を解決しようとは必ずしも希ってはいない。生活意欲というものは寧ろ問題を矛盾したまま会得しようと希っているし、事実それを日々実行している。この根強い希いが芸術を生み、こ…

ヴォルテール

神というものが存在しなかったら、「彼」を創造する必要があろう。 (「書簡」)

パスカル

神が存在するということは不可解であり、神が存在しないということも不可解である。 (『パンセ』)

埴谷雄高

――ところで、生れついてこの方絶えず外部からつき動かされている俺達が自らだけから発した意志、正真正銘の自由意志でおこなえることがこの人生に二つあるが、お前はそれがなんだと思うかね。 ――他のひとつは解りませんけれど、ひとつは古くから決っています…

ドストエフスキー

……やがて人々は、土の中から信じられぬくらいの収穫をひきだし、化学によって有機体を造りだし、わがロシアの社会主義者たちが夢みているように、牛肉が一人一キロずつ行きわたるようになるかもしれぬ。一口に言って、さあ飲め、食え、楽しめというわけだ。…

パスカル

人間とは、一体、何んという怪物であるか。何んという珍奇、妖怪、混沌、何んという矛盾の主、何んという驚異か。万物の審判者にして愚鈍なる蚯蚓(みみず)。真理の受託者にして曖昧と誤謬の泥溝。宇宙の栄光にして廃物。誰がこの縺れを解くだろうか。 無限…

ドストエフスキー

人間は良心の自由などという重荷に堪えられる存在ではない。彼らはたえず自分の自由とひきかえにパンを与えてくれる相手を探し求め、その前にひれ伏すことを望んでいるのだ。だからこそ、われわれは彼らを自由の重荷から解放し、パンを与えてやった。今や人…

コジェーヴ

人間が人間として客観的に実現されるのは、労働によって、ただ労働によってだけである。人間自身が現実に、客観的に自然的存在者以上のものであり、それと異なったものであるのは人為的対象を作り出した後であり、人間が自己の人間的かつ主観的な実在性を真…

管仲

倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る (『管子』)

小林秀雄

この主人公*1は、人間の意識というものを、殆どベルグソンの先駆者の様に考える。意識とは観念と行為との算術的差であって、差が零になった時に本能的行為が現れ、差が極大になった時に、人は、可能的行為の林のなかで道を失う。安全な社会生活の保証人は、…

小林秀雄

悲劇的感情ほどよく自覚された感情はない。一方に人間の弱さや愚かさがある、一方にこれに一顧も与えない必然性の容赦ない動きがある。こう条件が揃ったところで悲劇は起るとは限らぬ。悲劇とは、そういう条件にもかかわらず生きる事だ、気紛れや空想に頼ら…

芥川龍之介

彼は彼自身の現実主義者であることに少しも疑惑を抱いたことはなかった。しかしこう云う彼自身は畢竟理想化した彼自身だった。 (「或理想主義者」/『侏儒の言葉』)

日本人の6割が必ずやること

・風呂場のイスに座る前にイスとケツを濡らす ・とんがりコーンを指にはめる ・バームクーヘンをはがす ・扇風機の前であーーーって言う ・ポッキーのチョコの部分だけを舐めとる ・全校生徒の前でバンド演奏という妄想 ・自分の写メを何度も撮って、自分が…

三島由紀夫

「僕の思念、僕の思想、そんなものはありえないんだ。言葉によって表現されたものは、もうすでに、厳密には僕のものじゃない。僕はその瞬間に、他人とその思想を共有しているんだからね」 「では、表現以前の君だけが君のものだというわけだね」 「それが堕…

魯迅

むかし景気のよかったものは、復古を主張し、いま景気のよいものは、現状維持を主張し、まだ景気のよくないものは、革新を主張する。 (『魯迅評論集』)

サルトル

じゃ、これが地獄なのか。 こうだとは思わなかった・・・二人ともおぼえているだろう。 硫黄の匂い、火あぶり台、焼き網なんか要るものか。 地獄とは他人のことだ。 (『出口なし』)

志賀直哉

人間が鳥のように飛び、魚のように水中を行くという事ははたして自然の意志であろうか。こういう無制限な人間の欲望がやがて何かの意味で人間を不幸に導くのではなかろうか。人知におもいあがっている人間はいつかそのためむごい罰をこうむる事があるのでは…

ニーチェ

非論理的なものが人間には必要であり、また非論理的なものから多くの善きものが出てくるという認識は、一人の思想家を絶望させるに足るもののひとつである。非論理的なものは、情念や言語や芸術や宗教や、そして一般に生に価値を与えるすべてのもののなかに…

芥川龍之介

その代わりに我々人間から見れば、実際また河童のお産ぐらい、おかしいものはありません。現に僕はしばらくたってから、バッグの細君のお産をするところをバッグの小屋へ見物にゆきました。河童もお産をする時には我々人間と同じことです。やはり医者や産婆…

ドストエフスキー

「(前略)彼らに言わせれば、いっさいが≪環境にむしばまれた≫ためなのだ、――それ以外は何も認めない!彼らの大好きな文句だよ!この論でいくと当然、社会がノーマルに組織されたら、たちまちいっさいの犯罪もなくなる、ということになる。抗議の理由がなく…

埴谷雄高

人間は何故かくあるかを問うことはできない、とは、永劫の不可能の標識を掲げたいわば存在論ふうな暗い凹型の問いかけである。このような種類の問いかけを大きな特別の括弧にいれておき、自己の社会的存在についてなんらかの凸型の回答を提出し得る灰色の薄…

内田樹

人間の中心に「人間そのもの」――普遍的人間性――というものが宿っているとすれば、それはその人がどんな身分に生れようと、どんな社会的立場にいようと、男であろうと女であろうと、大人であろうと子供であろうと、変わることはないはずです。マルクスはその…

中井久夫

整頓、清潔、少なくとも清潔化(きよめ)の儀式、整序された世界の裏側にうごめく魑魅魍魎(おばけ)の世界とそれへの呪術の干渉、そして間歇的な攻撃性と奔騰、権力と支配の秩序――これはまさに強迫症の構造そのままである。「文化にひそむ不快なるもの」(…

M・マノーニ

精神障害児は≪狂人≫のレッテルが自分に貼られていることを知っていて、そのレッテルが彼から自己同一性を奪い、彼の言動にある種の無責任性を与える。……彼の精神病反応は他者と共同でつくられたものだ。つまり自分の≪病状≫の重さがまわりから認められるのを…

木村敏

反精神医学がその特徴としている常識解体をどこまでも首尾一貫して推し進めれば、それは必然的に社会的存在としての人間の解体というところまで到達せざるをえず、したがってまた、個人的生存の意志という、生物体に固有の欲求の否定に到達せざるをえない………

亀井勝一郎

人間は実にふしぎなもので、自ら恋愛し、求めて家族をつくりあげ、やがてその中で孤独になる。「神が人間を創り給もうた。さて、まだこれでは孤独さが足りないと思召(おぼしめ)て、もっと孤独を感じさせるために妻を与え給もうた」(ヴァレリー)という言…

宮台真司

マズローの欲求階層論によれば、生存の欲求が満たされても、安全の欲求があり、安全の欲求が満たされても、所属と承認の欲求や、自己実現の欲求が生じます。この議論のポイントは二つ。例えば安全の欲求から見て自己実現の欲求がゼイタクに見えても、下位の…