ニーチェ

非論理的なものが人間には必要であり、また非論理的なものから多くの善きものが出てくるという認識は、一人の思想家を絶望させるに足るもののひとつである。非論理的なものは、情念や言語や芸術や宗教や、そして一般に生に価値を与えるすべてのもののなかに、極めて密着してひそんでいるので、人は、これらの美しいものを致命的に傷つけてしまうことなしには、それを取り出すことはできない。人間の本質が、或る純粋に論理的な性質に変えられうる、と信ずることができるのは、ただ余りにも素朴な人々である。(中略)最も理性的な人にとってもまた、時には、自然が、すなわちすべてのものに対する非論理的な根本態度が、必要である。

「非論理的なものの必要」/『人間的、余りに人間的』(『若き人々への言葉』 原田義人訳 角川文庫)


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