木村敏

反精神医学がその特徴としている常識解体をどこまでも首尾一貫して推し進めれば、それは必然的に社会的存在としての人間の解体というところまで到達せざるをえず、したがってまた、個人的生存の意志という、生物体に固有の欲求の否定に到達せざるをえない……。反精神医学は、自己自身を徹底的に追求すれば、窮極的には反生命の立場に落ち着くよりほかない。

木村敏『異常の構造』)