政治

小林秀雄

間違ってばかりいる大衆の小さな意識的な判断などは、彼には問題ではなかった。大衆の広大な無意識界を捕らえて、これを動かすのが問題であった。人間は侮蔑されたら怒るものだ、などと考えているのは浅薄な心理学に過ぎぬ。その点、個人の心理も群集の心理…

埴谷雄高

さて、ところで、政治的立場の自由を主張した私自身の政治的立場は、非政治的であった。私はそんな自身が屡々滑稽になるが、もしこんな表現が許されれば、私は政治的無活動の自由をネガティヴな形で主張したことになる。私の態度は、古きギリシヤの懐疑派の…

小林秀雄

政治の取扱うものは常に集団の価値である。何故か(この何故かという点が大切だ)。個人の価値に深い関心を持っては政治思想は決して成り立たないからだ。ここにこの思想の根本的な或は必至の欺瞞がある。この必至の欺瞞の為に、政治は自然の速度を加減しよ…

埴谷雄高

政治を政治たらしめている基本的な支柱は、第一に階級対立、第二に絶えざる現在との関係、第三に自身の知らない他のことのみに関心をもち熱烈に論ずる態度である。自身の知らない他のことを論ずるために、私たちはまず他人の言葉で論ずることに慣れ、次第に…

小林秀雄

俺達は今何処へ行っても政治思想に衝突する。何故うんざりしないのか、うんざりしてはいけないのか。社会の隅々までも行き渡り、誰もこれを疑ってみようとは思わない。ほんの少しでも遠近法を変えて眺めてみ給え。これが、俺達の確実に知っている唯一つの現…

埴谷雄高

政治が支配者と被支配者のあいだに置かれて伸び縮む巨大な権力にかかわる体系であることを理解しなければ、私達は、政治の如何に些細な行動をも理解出来ないであろう。恐らく政治の体系に於いて最も微妙な部分を占めるのは、支配者の位置と心理である。あら…