思考

小林秀雄

人間は、手を持っているからこそ智慧を持つ、とアナクサゴラスが言ったが、恐らく、人間の知性の正しい解明は、原始人の石鏃から近代人の機械に至る、人間が作り得たもの或は破壊し得たものの裡にしか求め得られまい。人間が種族保存上、有効に行動し生活す…

僧璨

多言多慮、転た相応せず。 絶言絶慮、処として通ぜずということなし。 話せば話すほど、考えれば考えるほど ますます真理から遠ざかるばかり 話すことも考えることもやめなさい そうすれば知り得ないものは何もない 「信心銘」http://allofselfhelp.jugem.jp…

ヴァレリー

僕は正確という烈しい病に悩んでいた。理解したいという狂気じみた欲望の極限を目がけていた。そして、自分の裡に、自分の注意力の急所を捜し廻っていた。 それ故、様々な思想の持続を、少しでも増大する為には、出来るだけの事をした。容易な事は、すべて無…

埴谷雄高

さて、ところで、政治的立場の自由を主張した私自身の政治的立場は、非政治的であった。私はそんな自身が屡々滑稽になるが、もしこんな表現が許されれば、私は政治的無活動の自由をネガティヴな形で主張したことになる。私の態度は、古きギリシヤの懐疑派の…

ドストエフスキー

およそ直情型の人間ないし活動家が行動的であるのは、彼らが愚鈍で視野が狭いからである。[…]彼らは視野が狭いために、手近にある第二義的な原因を本源的な原因ととりちがえ、それでほかの人間より手っとり早く、簡単に、自分の行動の絶対不変の基礎が見つ…

孔子

知るを知るとなし、知らざるを知らずとなす、これ知るなり (『論語』)

鈴木大拙

知性は究極のものではなく、己れよりも高い何ものかを待って初めて、結果をかまわずに提起した全ての問題の解決を見るに到るのである。もし知性が、混乱の中に新しい秩序をもたらして、はっきりと解決をつけることができるものであったら、アリストテレスな…

小林秀雄

考えるとは、合理的に考える事だ。どうしてそんな馬鹿気た事が言いたいかというと、現代の合理主義的風潮に乗じて、物を考える人々の考え方を観察していると、どうやら、能率的に考える事が、合理的に考える事だと思い違いしているように思われるからだ。当…

小林秀雄

宣長は、「あはれ、あはれ」で暮らした歌人ではなく、「あはれという物」を考え詰めた学者である。歌は下手であったが、何故下手か、何故下手で差し支えないかを、はっきり考えていた人だ。(中略)理を怖れ、情に逃げた人ではない。彼は、もうこの先きは考…