ハルトマン

形而上学 (…)要するに、人間は苦悩するために存在しているのであり、消滅するに越したことはないのですが、数億年もすれば、再び「宇宙的無意識」は新たな人間を生み出して、彼らが再び苦しまなければなりません。さらに、仮に地球を破壊したとしても、「宇宙的無意識」はどこか別の惑星上に「盲目的意志」に支配される知的生命体を生み出し、彼らが人間と似たよう苦悩を背負わなければなりません。
それでは、人間はどうすればよいのか? ハルトマンの結論によれば、人間はできる限り進歩的な精神をもって、科学を発展させるべきなのです。

 

会社員 何ですって? ハルトマンは、科学の発展が人間世界を改善することはないと言っていたんじゃないですか?

 

形而上学 そうなのですが、彼が科学を発展させるべきだと言っているのは、人類を幸福に導くためではなく、人類があらゆる知識をもって「宇宙的無意識」を「宇宙的意識」に進化させ、宇宙が二度と生命を生み出したりしないように、絶対的に宇宙そのものを消滅させる方法を見つけるためなのです!

 

会社員 わかった! つまり宇宙自身が自殺するということですね!

 

形而上学 そのとおりです。二度と「存在の悲劇」が繰り返されないように、宇宙を永遠に消滅させるということです。

  高橋昌一郎『知性の限界』(p.255-256)

 

参考:『無意識の哲学』

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