バナール

科学主義者 (…)バナールの想定する未来人は、「複合脳」に進化して宇宙に進出する「科学者」と、「肉体の快楽と健康を享受し、芸術をたしなみ、宗教を愛護してゆく幸福で繁栄した人類」すなわち「人間主義者」とに分かれていきます。
地球上で楽しい人生を送った後の人間主義者は、「自分の肉体を捨てるか自分の生命を捨てるか」という決断を迫られることになります。ここで肉体を捨てて「複合脳」の一部になってもよいし、「自分の生命を捨てる」という従来の死と同じ選択もあるわけです。

実は、「無知や欲望や愚かさなど人間の内面に潜む悪魔」だけは、未来社会でも完全には克服されません。なぜなら、これら「人間主義者」によって引き継がれていくからでして、「科学者」は、宇宙植民地から地球を管理するようになります。
「こうして地球は、実は一個の人間動物園に転化してしまうかもしれない。その動物園は、きわめて賢明に管理されているので、そこに住んでいる人たちは自分が単に観察と実験のために保護されているのだということに気付かない、というわけである」

高橋昌一郎『感性の限界』(p.242-243)

 

参考:『宇宙・肉体・悪魔―理性的精神の敵について』

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/20091021/1256110055