西田正規

私たちには、巨大化した大脳に新鮮な情報を送り込み、備わった情報処理能力を適度に働かせようとする強い欲求があるものと考える。好奇心というものがそれであろう。そのために、もしも新鮮な情報の供給が停止することになれば、大脳は変調をきたして不快感を生じることになる。退屈というのはそのような状態であろう。

定住者は、行き場をなくした彼の探索能力を集中させ、大脳に適度な負荷をもたらす別の場面を求めなくてはならない。そのような欲が、どんな場面に向けられるのか予見することはできないにしても、定住以後の人類史において、高度な工芸技術や複雑な政治経済システム、込み入った儀礼や複雑な宗教体系、芸能など、過剰な人の心理能力を吸収するさまざまな装置や場面が、それまでの人類の歴史とは異質な速度で拡大してきたことがある。

『人類史のなかの定住革命』

参照:http://ittokutomano.blogspot.jp/2013/06/blog-post_11.html