玄侑宗久

じつは、荘子は「言葉」というものを信用していません。「夫れ言とは風波なり」(言葉は風や波のように一定せず当てにならないものだ)という人間世篇の言葉が、荘子の基本的な態度で、これは禅の「不立文字」にもつながっていく思想です。しかし荘子がそう言っているからといって、努力なしにいきなり「言葉はダメだ」と言っても仕方がない。言葉がどこまで役立つか、私なりに挑んでみましょう。「妄言」しますから「妄聴」してね――というのが荘子の態度です(「予(わ)れ嘗(こころみ)に女(なんじ)の為めにこれを妄言せん。汝以てこれを妄聴せよ」斉物論篇)。この番組テキストも妄読していただければ幸いです。

『荘子 何もないことを遊ぶ(p7)