柄谷行人

スピノザの『エチカ』のオプティミズムは、フロイトのこのペシミズムとちょうど表裏の関係にある。それは希望の物語をもたないがゆえに絶望をもたない。それは意味・目的をもたないがゆえに無意味をもたない。一方では、希望・意味をもたないがゆえにペシミズム・ニヒリズムにみえ、他方では、絶望・無意味をもたないがゆえにオプティミズム・信仰に映る。

『探求Ⅱ』