中村圭志

世俗的現代人は「宇宙の最高原理」も「神」も問いません。もっとも、何か絶対的なものをまるっきり信じていないわけではない。現代人のあいだには、宇宙の本質に関するある種の思考パターンがあります。宇宙とは進化淘汰を原理とするものだ――私たちはなんとなくそんなふうに考えているようです。

ビッグバンに始まった進化と淘汰の過程は、太陽系を生み、地球生命を爆発的に開花させ、やがて人類を誕生させると、今度はこの人類が文明を発達させて、文明勝ち残りリーグ戦をおっぱじめるや、もっとも優れたグローバル・インターネット文明が勝ち残ろうとして今にいたっている、と。この物語は、どの瞬間にあっても進化の戦いにおける勝者として生存する意欲をもちつづけるべきだという倫理観を伴っています。

 『信じない人のための〈宗教〉講義』

 

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