山極寿一

共感能力は本来、人間の協力を高め、一つの行動に向かわせるために利用されてきました。それが、言葉、定住生活、死者によって爆発的に高められ、共同体を脅かす敵に対し、一斉に向けられるようになったと僕は思っています。

しかし、自然界にもう人間の敵はいなくなってしまった。つまり、人間は自分たちの生活を拡大するために、今度は人間自身を敵にしてしまった。

それは人間の進化の中では、極めて最近のできごとだと思います。いったん身についた共感能力は、なかなか衰えません。僕はいうなれば、アレルギーみたいなものだと思っている。病原体の刺激に反応するはずの免疫力が、本来の刺激がなくなってきたときに別のものに向かい、爆発を起こす――。それが、いま我々が直面している事態なのではないか、と。

 人類の攻撃性、起源はどこに? 山極・京大総長に聞く:朝日新聞デジタル

参照:http://clnmn.tumblr.com/post/108511856337