五木寛之

自力であれ他力であれ、そのあいだで揺れ動く状態を否定的にとらえるのでなく、人間にはその二つのあいだを揺れ動くものであるととらえる。自分はどちらの側なのだ、と頑張るのではなく、肩の力を抜いて、不安定な自分のふらつきを肯定するのです。これが「無力」(むりき)という考えの根本です。
肯定とは、もうこれでいい、とすることではなく、揺れ動く状態にあるという現状をしっかり認識することです。(p.22)

『無力 MURIKI』