スティーブン・ピンカー

暴力に誘われるのは悪しきことと見なされ、だいたいにおいて刑事罰の対象とされるようになったが、この動きは「権利」を求める各種のキャンペーン、つまり公民権、女性の権利、子供の権利、同性愛者の権利、動物の権利などを求めて次々と起こった一連の運動のなかですすめられてきた。これらの運動は二〇世紀後半に集中しており、私はそれを一括して「権利革命」と呼ぶことにしたい。(p.13)

各運動は先行運動の成功に着目し、その先行運動の戦術やレトリック、そして何より重要な、道徳的根拠を参考にして取り入れたのだ。二世紀前の人道主義革命のあいだに一連の改革が立て続けに起こったが、その盛り上がりに火をつけたのも従来の固定化した慣習に対する知的な反省であり、その成功を側面から支えたのが人道主義、すなわち個人の肌の色や社会的階層や国籍といった外面的なことよりも、喜びや苦しみを感じることのできる個人の心そのもののほうが大切であるとする考え方だった。…知覚を持った生物の生きる権利や自由を得る権利、幸福を追求する権利が、その生物の肌の色のせいで制限されるものでないとすれば、そうした権利がその生物の性別や年齢や性的指向や種のせいで制限されるのもおかしいのではないか?そう考えていけば論理的な帰結は明らかであり、時と場合によっては頑迷な習慣や強引な力によってその結論にいたるのを阻まれるかもしれないが、オープンな社会でこの流れを阻止することは不可能である。(p.14-15)

『暴力の人類史』(下)


参照:http://davitrice.hatenadiary.jp/entry/2015/06/06/105518

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/03/21/124420
http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2015/06/06/214955