佐々木惣一
政治はもとより憲法に違反してはならぬ。しかも憲法に違反しないのみをもって、直ちに立憲だとはいえない。違憲ではないけれどもしかも非立憲だとすべき場合がある。立憲的政治家たらんとする者は、実にこの点を注意せねばならぬ。違憲とは憲法に違反することをいうに過ぎないが、非立憲とは立憲主義の精神に違反することをいう。違憲はもとより非立憲であるが、しかしながら、違憲ではなくとも非立憲であるという場合があり得るのである。然れば、いやしくも政治家たる者は、違憲と非立憲との区別を心得て、その行動の啻(ただ)に違憲たらざるのみならず、非立憲ならざるようにせねばならぬ。彼の違憲だ、違憲ではないというの点のみをもって、攻撃し、弁護するがごときは、低級政治家の態度である。