ベンジャミン・ウォーフ

われわれは、生まれつき身につけた言語の規定する線に沿って自然を分割する。われわれが現象世界から分離してくる範疇とか型が見つかるのは、それらが、観察者にすぐ面して存在しているからというのではない。そうではなくて、この世界というものは、さまざまな印象の変転きわまりない流れとして提示されており、それをわれわれの心――つまり、われわれの心の中にある言語体系というのと大体同じもの――が体系づけなくてはならないということなのである。われわれは自然を分割し、概念の形にまとめ上げ、現に見られるような意味を与えていく。そういうことができるのは、それをかくかくの仕方で体系化しようという合意にわれわれも関与しているからというのが主な理由であり、その合意はわれわれの言語社会全体で行なわれ、われわれの言語パターンとしてコード化されているのである。

『言語・思考・現実』

 

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