レヴィナス

存在することは、存在すること以外のもの全ての不可能性、自己革命以外の一切の革命の不可能性に他ならないのではなかろうか。存在することをも驚かしうる驚異にせよ、技術や魔術による刷新の驚くべき可能性にせよ、この世界の高みに住まう神々の完全性や不死にせよ、更には神々が人間に約束する不死にせよ、存在すること以外のところから到来したと言い張るどんなものも、在るのざわめきを和らげはしない。在るはどんなに否定されても再開するのだ。存在することによってなされる営みのうちには、いかなる裂け目もない。気晴らしも皆無だ。ひとり他者の意味のみが忌避しえないものである。他者の意味のみが、自己の殻に閉じ篭りそこに舞い戻ることを禁じるのだ。

(『存在するとは別の仕方で あるいは存在することの彼方へ』/合田正人訳)
※太字=原文では傍点