丸山眞男

われわれの社会における言語が組織の多元化と並行して複数的になるということ、それからイメージ自身が、それがどんなに元来の対象から離れていても、そのイメージなりに社会的に通用して、独自の力になっていくという、この基本的な事実から出発して、全体状況についての鳥瞰をいわばモンタージュ式に合成していくような、そういうテクニックと思考法というものを、われわれが要求されているんじゃないかと思うのであります。

原理とか原則とかの真理性というものによりかかっているだけではすまされなくなった。つまりこれがほんとうの「真理」なんだ、あとはみんなイリュージョンなんだといって安閑としていると、「イリュージョン」がどんどん新たな現実を作っていき、「真理」の方を置いてきぼりにして、現実が進行してしまうという、こういう状況のなかにわれわれはおかれている。

『日本の思想』