大岡昇平

自衛隊幹部なんかに成り上がった元職業軍人が神聖な日の丸の下に、アメリカ風なお仕着せの兵隊の閲兵なんてやってる光景をみると、胸くそが悪くなる。恥知らずにも程がある。
捕虜収容所では国旗をつくるのは禁ぜられていた。帰還の日が来て、船へ乗るためタクロバンの沖へ筏でひかれて行ったら、われわれが乗るのは福音戦になり下がった「信濃丸」で、船尾に日の丸が下がっていた。
海風でよごれたしょぼたれた日の丸だった。
私が愛する日の丸は、こういう汚れた日の丸で、「建国記念日復活促進国民大会」なんかでふり回されるおもちゃの日の丸なんか、クソ食らえなのだ。

『白地に赤く』
引用元:http://blog.livedoor.jp/junmyongra/archives/2008-12.html