長谷川英祐

進化は、永遠に終わることのない過程ですが、もしも「完全な適応」が生じれば進化は終わります。私は講義のなかで学生に「すべての環境で万能の生物がいれば、進化は終わるのか?」という問いを必ず投げかけます。全能の生物がいれば、どのような環境でも競争に勝てるため、世界にはその生物しかいなくなるからです。進化とはそんな、存在しない「神」を目指す長い道行きだともいえるでしょう。と同時に、なぜそのような生物が存在しないのか、理由を考えることも、生物を理解するうえでは大切な姿勢だといえるでしょう。

進化は神への長い道だとたとえましたが、世界は常に変わっているので、神の姿も変わり続けます。要するにゴールはないし、どうすればゴールに行けるのかも永遠にわからない、ということです。

『働かないアリに意義がある』