中村量空

秩序と乱雑の二つの世界は、いずれも複雑なものではない。私たちにとって厄介なのは、両者のあいだに位置する世界である。秩序がありそうだが、なさそうでもある。乱雑なようでもあるが、乱雑でないようでもある。わかりそうでわからない。そのような世界が、私たちにとってむずかしい複雑な世界なのである。
複雑さの原因は「中途半端な情報量」にある。この程度の情報では、さまざまな憶測が可能となり、「複雑度が増大」してしまう。情報が十分にある場合とまったくない場合には、逆に「複雑度は減少」する。
(…)現代はむしろ「中途半端な情報化」の時代なのである。さきが見えそうで見えないときに不透明感が生じる。まったく情報のなかった時代には、不透明感も生じようがなかったにちがいない。

『複雑系の意匠』