一ノ瀬俊也

「死ぬまで戦え」という軍の教えを自ら実行した死者には実に「丁重」だが、生きて苦しんでいる傷病者への待遇は劣悪で、撤退時には敵の捕虜にならないよう自決を強要している。もはや「戦果」よりも「戦死」それ自体が目的化しているかのようである。日本兵にとって戦友の命は軽いものだと米軍は判断した。戦後日本人の間には「日本軍の本当の強さの源泉は……友を逝かせて己一人、退却し、降伏できないというヨコの友情関係にあった」との見解がある(河原宏『日本人の「戦争」』一九九五年)が、米軍からみた日本軍像とは著しく異なる。(p94)

『日本軍と日本兵』