ユクスキュル
動物主体は最も単純なものも最も複雑なものもすべて、それぞれの環世界に同じように完全にはめこまれている。単純な動物には単純な環世界が、複雑な動物にはそれに見合った豊かな構造の環世界が対応しているのである。(p.20)
だが環世界のこの貧弱さはまさに行動の確実さの前提であり、確実さは豊かさより重要なのである。(p.22)
時間はあらゆる出来事を枠内に入れてしまうので、出来事の内容がさまざまに変わるのに対して、時間こそは客観的に固定したものであるかのように見える。だがいまやわれわれは、主体がその環世界の時間を支配していることを見るのである。これまでは、時間なしに生きている主体はありえないと言われてきたが、いまや生きた主体なしに時間はありえないと言わねばならないだろう。
次章では、空間にも同じことが言えることがわかるであろう。生きた主体なしには空間も時間もありえないのである。これによって生物学はカントの学説と決定的な関係をもつことになった。(p.24)
太字引用者