パスカル

ある人は、最高善は徳のうちにあると言い、他の人はそれを快楽のうちにおき、他の人は自然に従うことのうちに、他の人は真理のうちにおく。〈事物の原因を知りうる者は幸福である〉他の人は完全な無知に、他の人は無感覚のうちに、他の人々は外観に抵抗することに、他の人は何事にも驚嘆しないことにおく。〈何事にも驚かないことこそ、幸福を支えかつ保たしめうるほとんど唯一のものである〉そして健気な懐疑論者たちは彼らに平静(アタラクシア)、懐疑、絶えざる判断中止のうちにおき、そして他のもっと賢明な人々は、願い事の対象としてさえ最高善を見いだすことはできないとした。これでわれわれはもうさんざんである。

『パンセ』(p.56)