ドストエフスキー

《フム……そうだ……すべては人間の手の中にあるのだ、それをみすみす逃してしまうのは、ひとえに臆病のせいなのだ……これはもうわかりきったことだ……ところで、人間がもっともおそれているのは何だろう? 新しい一歩、新しい自分の言葉だ。だからおれはしゃべるだけで、何もしないのだ。いや、もしかしたら、何もしないから、しゃべってばかりいるのかもしれぬ。》

『罪と罰(上)』(p6)