デカルト

(…)理性が私に対して判断において非決定であれと命ずる間も、私の行動においては非決定の状態にとどまるようなことをなくするため、そしてすでにそのときからやはりできるかぎり幸福に生きうるために、私は暫定的にある道徳の規則を自分のために定めた。

第一の格律は、私の国の法律と習慣に服従し、神の恩寵により幼時から教えこまれた宗教をしっかりともちつづけ、ほかのすべてのことでは、私が共に生きてゆかねばならぬ人々のうちの最も分別ある人々が、普通に実生活においてとっているところの、最も穏健な、極端からは遠い意見に従って、自分を導く、ということであった。

私の第二の格律は、私の行動において、できるかぎりしっかりした、またきっぱりした態度をとることであり、いかに疑わしい意見にでも、いったんそれをとると決心した場合は、それがきわめて確実なものである場合と同様に、変わらぬ態度で、それに従いつづけること、であった。

私の第三の格律は、つねに運命によりもむしろ自己にうちかつことにつとめ、世界の秩序よりむしろ自分の欲望を変えようとつとめること、そして一般的にいって、われわれが完全に支配しうるものはわれわれの思想しかなく、われわれの外なるものについては、最善の努力をつくしてなおなしとげえぬ事がらはすべて、われわれにとっては、絶対に不可能である、と信ずる習慣をつけること、であった。

『方法序説』(p.32-36)

関連:http://hideasasu.hatenablog.com/entry/2013/12/24/091401