渡辺政隆

生物の進化史は、役者の顔ぶれを変えつつも、役柄の陣容に関してはきわめて保守的である。太陽のエネルギーを生活の糧にしている植物プランクトンや植物にあたる役から、それらを食べる草食動物、それを食べる肉食動物という役が、どの時代、どの場所の生態系にも必ず存在する。たとえるなら、進化とは、演出や舞台衣装、台詞の言い回しを時代に即して変えつつ演じられつづけてきた古典劇のようなものなのだ。

『ダーウィンの夢』(p.99)