ユクスキュル

ハイデルベルクの森を散策していて、一本の美事(みごと)なブナの木に出会ったことがあった。わたしはその前に呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした。すると突然、ひとつの認識が湧き上がったのである。これは一本のブナではない。僕のブナだ、と。僕がこの僕の感覚と知覚によって、この美事なブナのそのあらゆる細部を今構成したのだ、と。

『動物の環境と内的世界』解説

 

参照:(ニュースの本棚)生命の「なぜ」 またいつか新しい答えが 福岡伸一