スタニスラス・ドゥアンヌ

数学が進化しているのは、よく立証された歴史の事実だ。数学は、堅固な知識のかたまりなどではない。その対象も、論理展開のやり方さえも、多くの世代を経て進化してきた。数学の城は、試行錯誤で建てられてきた。もっとも高い骨組みは、ときには崩れる寸前となり、それを壊しては再構築するという終わりのない繰り返しの中にある。どんな数学的構築の基礎も、集合、数、空間、時間、論理の概念といった、本質的直感に基づいている。これらはほとんど疑問視されることはなく、私たちの脳が作り出す、何者にも還元できない表象に深く根ざしている。数学は、これらの直感の形式論理化をだんだんに進めてきたと言ってよいだろう。その目的は、そうした直感をより矛盾なく、互いに整合性があり、外界に関する私たちの経験により適応したものにすることである。(p.427)

脳には物理現象に人間中心の枠組みを投影するよう、バイアスがかかっているので、進化とランダムさがあるだけの時に、設計の証拠を発見したと思ってしまうのだ。ガリレオが述べたように、本当に、宇宙は「数学の言語で書かれている」のだろうか?私はそうではなくて、数学は私たちが宇宙を読み解くのに使える唯一の手持ちの言語なのだと考えている。(p.437)

『数覚とは何か?―心が数を創り、操る仕組み』

 

参照:http://ser-lys.blogspot.com/2010/08/blog-post_24.html

参考:数学的直観主義 - Wikipedia