分裂病者の基底に、世界内存在としての人間を支えている「自然な自明性」の喪失を認め、それを分裂病性疎外とよぶ。自明性の喪失はまた、世界に根をおろし、世界と親しむこと、つまり「常識」(コモンセンス)の病理でもある。

(『精神病を知る本』・フランケンブルク『自明性の喪失』解説より)

「正常人」「異常人」が自明としている1=1の基本公式が、分裂病者にとっては自明ではなくなっている。が、逆に言えば、「正気」は自己に拠って立つ常識的合理性を脅かすものを「狂気」として排除する、閉鎖的・特権的な論理体系のひとつにすぎない。

(同前・木村敏『異常の構造』解説より)