山本七平

ではここで、われわれはもう一度、何かを決定し、行動に移すときの原則を振りかえってみよう。それは「『空気』の研究」でのべたとおり、その決定を下すのは「空気」であり、空気が醸成される原理原則は、対象の臨在感的把握である。そして臨在感的把握の原則は、対象への一方的な感情移入による自己と対象との一体化であり、対象への分析を拒否する心的態度である。従ってこの把握は、対象の分析では脱却できない。

『「水=通常性」の研究』