田沼靖一

有性生殖によって生まれる子は親とは遺伝子的に少し異なっている。有性生殖の本質は、遺伝子組み換えによって遺伝子をシャッフル(混ぜ合わせ)して、バラエテイーにとんだ子を作ることなのだ。遺伝子組み換えが有利であるのは、有害な細菌、ウイルス、その他の寄生者に対して抵抗性のある遺伝子構成を持った個体を作り出せる可能性があるからだ。
親の世代で猛威をふるった病原体に対して、有性生殖によって多様化した遺伝子構成ををもった子の中には、それを免れるものが確率的に存在する可能性があるからだ。

有性生殖を介して新たに配り直される遺伝子が生存していくためには、有害な遺伝子が蓄積しているもとの古い遺伝子と混ざり合うことは避けなければならない。さもなければ、遺伝的荷重が積み重なってしまい、進化どころか、その生存を妨げるおそれがでてきてしまう。こういった可能性を確実に回避するために、古い遺伝子を個体ごと消去する必要があったのだと考えられる。しかも、アポトーシスとアポビオーシスにより、それぞれ再生系から非再生系の細胞に二重に死をセットすることで、どちらからでも死ねるようなシステムにしたのではないかと考えられる。
新たな遺伝子として生を更新するために死が必要であった。

 「遺伝子の夢」
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/2989/dnadream.html