片山杜秀

ファシズムは権力者から実権を奪ってゆきがちな近代社会の複雑化と専門化を逆手に取る。ファシストは複雑化と専門化に反対しない。それどころかわざと過度に推進する。役人や学者やその道のプロがこんがらがって自分の立ち位置さえ分からなくなるまで。そうして生まれる究極の混乱状況の中で、みなが思考停止しているあいだに、やりたい勝手を押し通す。それがファシズムなのだ。

 『国の死に方』