ヤスパース

(…)世界史の枢軸は紀元前800年から200年の間に発生した精神的過程のうちに存するように思われます。私たちとともに今日に至るまで生きているところの人間が現れたのであります。私たちはこの時代を簡単に《枢軸時代》(Achsenzeit)と呼ぶことができるでしょう。

この時代の新しいことといえば、人間が存在全体を、自己自身と自己の限界を、意識するようになったということであります。人間は世界の恐るべきことと、自分自身の無力さを知り、徹底的に疑い、深淵に臨んで解放と救済を渇望するようになりました。人間は意識的に自己の限界をとらえることによって、最高の目標を設定するようになりました。人間は自己存在の根底と超越者をはっきり見ることにおいて、無制約的なものを経験するようになりました。

 『哲学入門』

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