小坂井敏晶

自由とは何か。それは因果律に縛られない状態ではない。自分の望む通りに行動できるという感覚であり、強制力を感じない状況のことだ。強制されていると主観的に感じるか否かが、自由と不自由を分ける基準をなす。他の要因によって行為が決定されるかどうかという客観的事実は、自由かどうかの判断とは別の問題だ。我々は常に外界から影響を受けながら判断し、行動する。しかし自分で決めたと感じる場合もあれば、強制されたと感じる場合もある。主観的感覚が、自由という言葉の内容なのである。

 『人が人を裁くということ』

 

太字=原文傍点